2012年9月2日日曜日

今日活字になった歌

現金が欲しいと書けば「あげます」と応える人のいる掲示板
日経歌壇(9月2日) 穂村 弘 選
(評)
「現金が欲しい」よりも「あげます」に時代の怖さを感じる。
カギ括弧をどう付けるかで迷った一首。
「あげます」という匿名の声の気持ち悪さにスポットを当てるため、
最初の、現金が欲しい、にはカギ括弧を付けなかった。

コピーライティングの基本として、
必要以上にカギ括弧を使うのは好ましくないと誰かに聞いた記憶があるけど、
短歌の場合はどうなんだろう。

今日は同じ欄に響乃さん(本多真弓さん)の歌も載っていた。
嫁として帰省をすれば待つてゐる西瓜に塩をふらぬ一族 (本多真弓)
学生の頃バイトをしていた職場で、
盆休み前後の人が少ない時期のシフトで
たまたま一緒に昼食をとったパートのおばさんに振られた話題が、
まさにこの短歌と同じ内容だった。

もしかしたら、あれは響乃さんだったのかもしれない。

「一族」という言葉が怖くていいなと思った。
僕はふらぬ側の人間。
ささいな所作ひとつに注目することで、
そこを基点に世界が二分されて見えるのが面白い。

2012年8月13日月曜日

昨日活字になった歌

二回目の死を待つ肉のために鳴るタイムセールの鐘朗らかに

日経歌壇(8月12日) 穂村 弘 選
(評)
動物としての「死」の後に「肉」としての「死」があるとは。 生命の連鎖を思う。

今年2月ぶりの一席。

穂村さんに届く予感はあったけど、
まさか一席になるとは思っていなかったので嬉しかった。

この歌は、ちょうど一ヶ月半くらい前に
Twitter上で開催された「1時間歌会」(山本まともさんによる突発企画)に提出した、
準遺体安置所として食肉の売り場は四季を通じて寒い
という短歌の生まれ変わり。
生まれ変わる前の歌も着想は気に入っていたものの、

・「準遺体安置所」という言葉のインパクトに頼りすぎ
・字数合わせのために「食肉売り場」に「の」が入ることのぎこちなさ
・「四季を通じて寒い」の状況説明が当たり前すぎて伸びしろがない

ことがどうも気持ち悪くて好きになれず、

もっと自然な表現で、生から死、次の死までの
時間の流れを感じられる歌にしたいと思って
ゼロからつくりなおした。

自分が良いと思った着想は、一回上手く歌に出来なかったくらいで捨ててしまわずに、
ぴったりくる表現を粘り強く探してみることが大切だと思った。

今回の日経歌壇では、自分の歌が載ったこと以外に嬉しいことがもうひとつあった。
「何らかの歌詠みたち」の傍観担当、木下龍也さんの歌も載っていたのだ。
遠回りさせる構造なのだから遠回りしてレジまで来いよ (木下龍也)
偶然にも僕の歌と同じスーパーとかコンビニっぽい場所指定の短歌。
これは穂村さんの粋な計らいのような気がしてならないのは、
おそらく僕の気のせいだろう。

彼の実力からすると今後もまたどしどし載るだろうけれど、
日経での彼の(おそらく)デビューに立ち会えたのは良かった。

2012年8月6日月曜日

ぐっときた歌

短歌くださいと日経歌壇の両方に納得のいく歌を投稿するのは
今の自分の実力だと大変で、息切れしがち。

その点、両方で常連になっている鈴木美紀子さんは凄い。


5歳までピアノを習っていましたとあなたの指に打ち明けるゆび (鈴木美紀子)
短歌ください(ダ・ヴィンチ 2012年9月号)

そばにいるひとにはきっとわからないすれちがうときあなたは香る (鈴木美紀子)
日経歌壇 穂村弘選(2012年8月5日付)


昨日の日経歌壇は他にもいい歌が沢山あった。
特に、僕の注目している「お二方」の歌が
岡井さん、穂村さん両方の選で一席に選ばれていて、
二首とも素晴らしかった。
「ああ、自分にとって懐かしい夏、好きな夏ってこういう情景だなあ」と
思い起こさせてくれた。

妹の浴衣の赤が映えるよう心まで濃い藍を着た夏 (魚ノ棚法子)
日経歌壇 岡井隆選(2012年8月5日付)

おっさんがラジオ体操第一のままで第二にひそむ朝もや (羹 昌浩)
同 穂村弘選(2012年8月5日付)



自分が惹かれる歌に共通する特徴って何だろう。
思いつくままに書いてみると、

 当事者性が感じられる。

 日常にひそむ何気ないディテールを、
 五感にねざした視点、先入観のない子どものような視点で捉えている。

 その歌で描かれている状況に置かれたことがないのに、
 なんだかそこに居たことがあるような気にさせられる。

 なにげなく切り取った風景に、元から詩情がひそんでいる。
 或いは一言添えることで詩情を生みだしている。

そんなところか。
これらは自分が志向する歌の特徴でもあるし、
またいずれ文章にまとめて考えてみたい。

今日活字になった歌

胆石と高血圧の既往あり健診太郎三十二歳

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(9月号)第53回テーマ「年齢」 
(穂村さんの選評)
「『大阪太郎』とか『年金太郎』とか、市役所の記入用紙の見本にある人名のプロフィールを見るのが好きです」という作者のコメントがありました。私も彼らを想像してみることがあります。若過ぎたり完全健康体だったりすると、健康診断の問診票の見本である「健診太郎」は務まらないんですね。

6月号以来の採用。
7月、8月は納得のいく歌が作れず、二首しか投稿できていなかった。
やっぱり五首は送らないと載るのは厳しいのかな。

ただ、自分で納得のいく歌は必ず(穂村さんには)届いているのは嬉しい。
自分でも嘘くさいと思う歌は百発百中で没になっている。

『短歌ください』は、単行本として続編が出るとしたら
第31回~60回までが収録されるだろうから、
出来るだけ多く載せておきたい。

今月号には、くどうよしおさん、山田水玉さん、山本まともさん、と、
知った名前の方が3人も載っていた。
みんな劣らず面白い歌で、そのことも嬉しかった。


【番外】 同じ「年齢」テーマで送って没になった歌。
もう熟女モノに出るのか去年まで女子高生の役だったのに
熟女好きの某隠れキノシタンを喜ばせるつもりで作ったけれど、叶わなかった。

2012年7月27日金曜日

『短歌の夜明けらしきもの』 思い出ぽろぽろバージョン

『エキチカヘブン ファイナル』に何らかの歌詠みたちを観に来てくれた方と、
観には行けなかったけど遠くから応援してくれていた方へ。

当日配った『短歌の夜明けらしきもの』に、

・木下龍也さんによる、背筋に冷たいものが走る冒頭文章
・飯田和馬さんによる、思い出をフリーズドライしたライフログ短歌
・岡野大嗣による、感謝の気持ちを表したあとがき文章
・飯田彩乃さんによる、上から目線短歌

と、当日の会場風景の写真を散りばめたアルバムページを追加した
思い出ぽろぽろバージョンを鋭意制作中です。

ページをめくれば、
あの日の思い出が光と風と汗のにおいとともに鮮やかによみがえるように
心を込めて編集しています。

それを皆さんにプレゼントしたいのです。

ご希望の方はコメント欄にコメントを残しておいてください。

後日、発送の段取りを案内させていただきます。


出来るだけ希望の方全員にプレゼントするつもりですが、
発送は、当日観に来ていた方から優先にさせて頂きます。ご了承くださいませ。

『エキチカヘブン ファイナル』 感想2

『エキチカヘブン』の入場料は1ドリンク込みで3000円。

「何らかの歌詠みたち」以外にも沢山の表現者を観ることができるとはいえ、
CD1枚買ってお釣りが来るチケット代を払ってまで
わざわざ堺くんだり(堺市すみません)まで応援に駆けつけてくれた人が沢山いた。

遠路はるばる新幹線を乗り継いで来た人もいる。

だから、観に来てくれたみんながイベントそのものを楽しんでいるのを見ると
ほっとしたし、すごく嬉しかった。

自分の出番以外、みんなの笑顔ばかり探していた気がする。

エキチカヘブンの他の出演者の方を観ていて思ったのは、
みんな自分に対して茶化すことなく、
ふざけるのもかっこつけるのもぜんぶ大真面目にやっていること。

自分はといえば、ちょっと照れ隠ししていた部分もあったし、
もっとストレートに気持ちを込めて朗読すればよかったな、と
すこし悔しい気持ちを残してしまった。

朗読用のレジュメにつけたタイトルは『短歌の夜明けらしきもの』

何らかの歌詠みたちの短歌の夜明けらしき朗読なんて、
あらかじめ言い訳の余地を残したような
我ながらふざけた言い草だ。

その懺悔というわけではないけど、
いつの日か「これが短歌の夜明けだ」といえるようなものをつくりたい。
という気持ちが、今になってふつふつしまくっている。

イベント当日はお祭りの喧噪にかまけて、
雑なありがとうを繰り返してばかりいた。
一人ひとりにちゃんと感謝の気持ちを伝えられたかどうか不安だ。

だからここでもう一度きちんと言っておく。

みんな本当にありがとう。

三十一文字でどこまで行けるかやってやろうという気になれました。

『エキチカヘブン ファイナル』 感想1

去る7月15日(日)、
名前はまだなゐpresents『エキチカヘブン ファイナル』に
「何らかの歌詠みたち」として
客演させていただいた。

『名前はまだなゐ』というのは、
「芝居とは呼べない何かをつくる」という曖昧なコンセプトにより始動し
「奇天烈朗読POP」というのを標榜したり
「全ての人生はああと」を胸に活動している
何らかの芝居集団。

リーダー役の杉田真吾くんは
僕の幼稚園来の友人であり、
僕が短歌をはじめた頃からの熱心な読者であり、
熱いハートの持ち主なのにそれでいてやけに爽やかな男である。

『エキチカヘブン』は、
杉田くんの好きな表現者や杉田くんを好きな表現者たちによる
芝居、漫才、音楽、演劇などをごちゃまぜにした
ブッキングイベント・異種格闘技大会で、
そこに短歌朗読というスタイルで参戦した。

ひとりでは心細いので、
木下龍也さん(傍観担当)、飯田和馬さん(花束担当)、
そして紅一点の飯田彩乃さん(ワンピース着用)のお三方を召還し、
「何らかの歌詠みたち」というチームを組んで、
舞台であり天国となる 『コミュニティカフェpangea』に
満を持した雰囲気を醸しつつ乗り込んだのであった。


『名前はまだなゐ』HP
http://namaehamadanahi.org/namaehamadanahi.html