ラベル 何らかのまとまり の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 何らかのまとまり の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年8月25日木曜日

とぎれとぎれ

ギター引き摺ってくひとの砂浜を腰から下で捉えたヴィデオ

場所取りのブルーシートに静けさが座って鳩と仲むつまじい

店じまいするコンビニの減っていく棚の前で誰も泣いたりしない

ぬいぐるみになると可愛くない系のあなたはスヌーピーみたいだね

写メでしか見てないけれどきみの犬はきみを残して死なないでほしい

分譲地へのルートを掲げてるひとのレインコートがすごく透明

Costcoのトレーラーが似合う湾岸を実際の映像として見る

次にやる曲のさわりを鳴らすようにつつじが咲きかけの並木道

前をゆく女のひとは鼻歌がきれいで赤ちゃんを抱いている

ぼくの聴く音楽こそが素晴らしいと思いながら歩く夜が好きだよ

ミシンフェアの刺繍の音をおみやげに手ぶらの散歩からのただいま

もう何もないだろうけど文庫本の残りページの薄さを撫でる



 初出:短歌誌『かばん』2016年5月号 「ゲストルーム」コーナーに掲載
 ブログ掲載にあたり、7首目に出てくる言葉を一部変更しました(トラック→トレーラー)

2016年7月1日金曜日

Countless Little Stars

加速する電車の音は4速で窓の景色になじみ始める

経って知る訃報みたいに見つけたよ飛行機雲のほつれるところ

ため息を細く吐いたらなんということでしょう涼しい口笛に

@マークに変えないで送ったら稀に☆まで届くアドレス

ボーリング場のネオンが揺れている以外はぜんぶ暗やみの川

(きらい)が(あ、綺麗)に変わる瞬間の「り」と「る」をつなぐ小さなスラー

好きだった曲を好きなまま歳とっておんなじ歌詞になんどでも泣く

2015年8月13日木曜日

折ッ句ス

俺はラジャ 闇のルートで白い粉ラクに捌いて狡くやってる

リークされラジャはからがら月の夜クアラルンプールまで逃げ落ちた

付き人がラジャにとうとうノーを突き返したわけだ 「割に合わねえ」

雲隠れするにも金だ 利が良くてづぐづぐ削るケバブの丸太

吸える葉を物好きたちに売りにゆく遠いところでリオ・デ・ジャネイロ


※初出『大阪短歌チョップメモリアルブック』内の企画「タイトル無茶ぶり五首競詠」に寄稿
・お題は飯田和馬さんより。
・1首目から順に「おやしらず」「りらっくま」「つらのかわ」「くすりづけ」「すもうとり」で、それぞれ初句の1文字目を追うと「おりつくす」になっています。

2015年4月21日火曜日

ゴーストごっこ

「生きなきゃ」が「起きなきゃ」に漕ぎつくまでの「う」と「え」における長い逡巡

お昼時すいません、って頼まれて後悔どうぞの画像を送る

曇天を支えるように咲いている桜の下でととのえる息

近づいて来ているように見えていた人が離れていく人だった

曇天の下で天丼食っている飯田和馬のとなりにすわる

ひとつだけロープに巻き付いてる旗が ギリシャかな ああ、アルゼンチンか

視聴機の前でリズムをとる人の背後でぼくもとるふりをする

ふとんからぼくのにおいが消えたときほんとの意味で訪れる死後

2014年8月4日月曜日

舌で遊ぶ

銀行の冷水器からウォーターがおしゃれなシュートの軌道のように

【写真】プレーに納得がいかず舌を出す新潟・川又 で時間をつぶす

納得がいかないときに出す舌の長さにおいてワールドクラス

落ち武者が舌を噛みきり自決する三秒前に見えなくもない

筆舌に尽くしがたくて文字通り舌を巻こうとしているところ

番号札52番のお客さま舌を出すのはおやめください

2013年11月20日水曜日

インターチェンジ

生き延びるために聴いてる音楽が自分で死んだひとのばかりだ

銃口の闇に焦がれて極東のENEOSで引く給油トリガー

運転に支障は無くて何年も放置している心の異音

違反速度で逃げたってどこまでも追いかけてくるこの脳みそめ

アクセルを踏み込みなおす降り口を逃した先に夕陽が見えて

渋滞のニュース聞きつつその距離に連なりを成す命を思う

ジャンクションの弧線が光る ささやかな意志の前途を讃えるように


『NHK短歌』2013年11月号「ジセダイタンカ」への寄稿作品
3首目は安福望さんのブログ「食器と食パンとペン」で絵をつけてもらった
→ 水面と眠り

2013年8月1日木曜日

氷の歌

学校は4限目 ぼくは溶けきった氷まくらの音を聞いてる

ともだちは家に呼べない味の無い氷がおやつなんて言えない


ヒースロー空港で見た外国のひとも氷におしっこかけてた


北極の氷は溶けてゆく僕がだらしなくてもそうじゃなくても




暑中お見舞い代わりに、『夜はぷちぷちケータイ短歌』の氷テーマに投稿した過去作を並べてみました。

3首目までが穂村弘さん選、4首目は東直子さん選。

同じテーマの投稿歌のなかで印象に残っているのは次の歌。
背筋にひゅっと冷たいものが走って、涼しくなれる一首です。



回りつつ氷が水に溶かされる 最も静かな共食いとして /大平千賀

「最も静かな共食い」という鮮烈なフレーズと、作者が大平さんだったことを覚えていたので検索できた。

『夜ぷち』の投稿歌もまとめて単行本にすれば、『短歌ください』みたいに売れると思うんだけどなあ。