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2014年6月6日金曜日

今日活字になった歌

友達の遺品のメガネに付いていた指紋を癖で拭いてしまった

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2014年7月号)第75回「眼鏡」 
(穂村さんの選評)
「ぼんやりして拭いてしまい、取り返しのつかないことをしてしまったことに鳥肌が立った」との作者コメントあり。日常の裂け目のような一瞬。物理的な次元ではただ「メガネ」を拭いただけなのに。

「友達」は、実際に呼んでいたあだ名にするか迷ったけど、
そこでリアリティを追求する必要はないと判断してやめた。

自作短歌にからめて自分語りをするのは野暮かもしれないけど書く。

その友達は同じマンションに住んでいた幼なじみで、小学校の頃はそれほど親しく遊んでいなかったけれど、
中学の剣道部で3年間、僕が主将、彼が副主将を努めて以来、親友といって差し支えない仲になった。
高校1年のとき、Nirvanaの“From the Muddy Banks of the Wishkah”という実質的にはカート・コバーンの追悼盤に
近いライブアルバムを「Track1冒頭のシャウトが凄いから聴いてみろ」と半ば無理やり彼に貸しつけた。
それ以来、彼はなぜかデスメタルをこよなく愛する青年になってしまった。
歌声なのかブルドッグの唸り声なのか聴き分けのつかない音楽を、彼は貪るように聴いていた。

それでも、僕が薦めるポップミュージックだけは好んで聴いてくれて、
くるりの『東京』を貸したときには、その感動をマンションの廊下で夜通し語られた。
秋も終わりかけの頃で、まさかそんなに長時間話すことになると思わず油断して部屋着のまま外に出て話をしたので、
次の日に風邪を引いてしまったのを覚えている。
そんな感じで、僕らはよくマンションの廊下でお互いに好きな音楽の話をしていた。

彼のことを思いだすとき必ず、一緒に行ったくるりのライブのことを思いだす。
京橋のIMPホールで観たTEAM ROCKツアーのライブ。
当時のくるりのレパートリーから考えられうる最高のセットリストを終え、
アンコールではナンバーガールの向井秀徳氏がサプライズで登場。
日本の音楽史上屈指のメガネツートップがステージに並び立ち、
西暦2000年のアンセム『ワンダーフォーゲル』を演奏してくれるという夢のような夜だった。
この日のライブはYoutubeで観ることができる。

そのときの再アンコールのときのコールが、「メ・ガ・ネ!メ・ガ・ネ!メ・ガ・ネ!」だったという話。


採用歌以外に投稿したのは次の短歌。

未来から来た科学者がめがねめがねめがねめがねとうろたえている

来月号のダ・ヴィンチの第2特集はフジファブリックらしい。
短歌を載せた上で買いたいなあ。

2014年5月7日水曜日

今日活字になった歌

百歳が配るティッシュをスルーしてゲートボールへ向かう百歳

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2014年6月号)第74回「ティッシュ」 
(穂村さんの選評)
「いつかそういう日が来そうな気がします」との作者コメントあり。不気味な未来像ですね。現在と同じ社会システムのまま、年齢だけが上がっている怖ろしさ。

最近、老人短歌ばかり作っている気がする。
老人のあれこれに着目すると短歌ができやすい。

駅前でティッシュを配る人にまた御辞儀をしたよそのシステムに /中澤系

中澤系さんのこの短歌がとても好きで、
自分でも歴史に残るティッシュ配り短歌を作りたくて
ティッシュ配り短歌ばかり作っている時期があった。
駅前で、スクランブル交差点で、新装開店のパチンコ屋の店先で。
ティッシュ配りの一挙手一投足を細大漏らさず観察して作歌に励んだけれど、
ティッシュ1枚の価値も無い、ごみのような短歌しか出てこなかった。
受け取る側の視点から抜け出し切れず、
若い頃に一度もティッシュを配らなかった自分を悔やんだ。
いまさらティッシュ配りに転職するわけにもいかなかった。

そんな中でも今回の百歳短歌は、それなりに詠めた手応えがあったし、
穂村さんのコメントに「社会システム」という言葉を引き出せたことには満足。
系さんの短歌のアップデート版というほど格好いい出来ではないけど。

『短歌ください その二』を読んで、「『その三』では帯に短歌を載せてやる」と思って投稿を再開。
久々の投稿で不安だったので、今日誌面に名前を見つけたときは初めて載ったときのようにうれしかった。
初めて載ったときと同じで、木下龍也氏が同じ誌面にいたのも良かった。まあ彼は毎月いるけど。

次回テーマの「眼鏡」にはチャーミングな未来像の短歌を1首送ってある。
ぼんやりしていてペンネーム欄をふりがな欄と勘違いして「おかのだいじ」で投稿してしまったので不安。
万一それが帯の短歌になってしまったらどうしよう。

そんなことを心配しているヒマがあるなら歌集の構成を考えるべきだ、おかのだいじよ。

2013年10月4日金曜日

今日活字になった歌

念のため林檎も鞄に入れている果物ナイフ持ち歩くとき

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2013年11月号)第67回「果物」 
(穂村さんの選評)
「果物ナイフだけ持っていると軽犯罪法違反に問われる可能性があるらしいです」との作者コメントあり。なんともアイロニカルな歌ですね。「鞄」に「林檎」は大きすぎて邪魔だけど、蜜柑やさくらんぼじゃ駄目なんだ。

使い終わった果物ナイフを「あとで食器とまとめて洗おう」と思って

台所のシンクに置きっぱなしにした結果、そこに置いていたことを忘れて、
食器を洗うときにフォークか何かと勘違いして握ってしまい、指をざっくり切ったことがある。
それ以来、果物ナイフの刃を見るのが怖い。

余談でした。


果物テーマには他にこんな歌を投稿していた。

生ハムのメロン!ピラフの干し葡萄!酢豚のパイン! みな蜂起せよ!
甘くない西瓜もたまにあることを実家出てから初めて知った

ピラフの干し葡萄が一番苦手。

自由テーマの方に凄いのを出したつもりだったのに載っていなくて、

悔しくて「もう短歌あげないぞっ」と思った。
でも、見直してみると大きな傷がある歌だったので、そこを補修してストックすることにした。



今回は他に、日経歌壇で名前をよく見る横山ひろこさんの歌も載っていた。
たぶん同じひとだと思う。

スイカ割りよくやりましたなつかしい青い青いスーパーの床に /横山ひろこ



あと、僕の右隣に載っていた竹林ミ來さんの歌も良かった。


教室に打ちつける雨 給食のバナナを女子は決して食べない /竹林ミ來


竹林さんの短歌にはいつも独特の未来観があり、

僕は竹林さんのことを密かに「竹林ミ來観」という筆名で呼んでいる。

今月号で採用されていた方々の年齢はいつもより少し高めで、

おかげで僕はいつもより少しだけ若くなった気になれて嬉しかった。

2013年9月6日金曜日

今日活字になった歌

僕を切り売りするような感覚で切り取る分割証明写真

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2013年10月号)第66回「写真」 
(穂村さんの選評)
実感がありますね。「僕を切り/売りするような/感覚で/切り取る分割/証明写真」と、五七五七七のリズムによって、現に内容が「分割」されているところもいい。
プリクラではそういう感覚にならなかった。1回しかやったことないけど。

他にもう1首だけ送っていて、載るとしたらこっちの方かと思っていた。
でも今見るといまいちな気がする。
それ用に撮ってないから歯を見せておだやかな目の指名手配者

自由詠の方に載ってた木下さんの短歌。
僕用の墓だと思う地下駐車場で車を眠らせるとき /木下龍也 
作者コメントとして引かれていた「エンジンを切り、ふっと静かになるあの瞬間が好きです」は
分かるなあ。あの瞬間はいい。小さな死。

あと、工藤吉生さんの短歌が題と自由の両方に載っていて、
それぞれ工藤さんらしくてよかった。
桜の木見上げて写真を撮るひとの片方曲げた足がよかった /工藤吉生 (題「写真」) 
精子以前、子のない頃の父の食う牛丼以前、牛や稲穂や /同 (自由詠)
自由詠の方の「精子」を、僕は勝手に「たね」と読んでいたので、
音数もぴったりでぐいぐい読めて気持ちいい歌だと思った。
工藤さんの代表歌のひとつになりそうな予感。

僕も、来月号のは題も自由も自信があるんだけど、両方載るといいな。

2013年7月5日金曜日

今日活字になった歌

ひとりだけ光って見えるワイシャツの父を吐き出す夏の改札

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2013年8月号)第64回「駅」 
(穂村さんの選評)
「夏」の夕暮れの「ワイシャツ」の輝き。「ひとりだけ光って見える」の子供目線に、生々しいノスタルジーが宿りました。これは母では成立しない歌。
描写も響きも表記のバランスも、久しぶりに気に入っていた歌なのでうれしい。
ワイシャツと改札で韻を踏んでいることには今日はじめて気付いた。
自分では気付いていないけど上手くいっている、くらいが丁度いい。



2013年6月7日金曜日

今日活字になった歌

Tabキーの羽虫を潰しちゃったTabなんて滅多に押さないのにな

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2013年7月号)第63回 自由題 
(穂村さんの選評)
「運の悪い奴だな、と思います」との作者コメントあり。我々人間に対して、神様もそんな風に思ってるのかも。日常詠の中に摂理への眼差しが宿っています。
いつもは20代女性が多い気がする「短歌ください」だけど、
今月は30代男性の健闘が目立っていた。
また健闘したい。

2012年10月6日土曜日

今日活字になった歌

アラビア語実用会話例に「このライフル銃はあなたのですか?」

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(11月号)第55回テーマ「日常」 
(穂村さんの選評)
日常という概念は地域や時代によって大きく変化する。つい忘れがちなその事実が浮かび上がってきます。「実用」の一語がいい。
過去に作った歌に
日常要素として「実用会話例」という言葉を入れて再編集したもの。

投稿者の名前を消したうえで今月号を知人に見せたら、
一発で「ライフル銃のが岡野さんのでしょう」

そういうわけで、自分らしさが出ている一首だと思う。

2012年8月6日月曜日

今日活字になった歌

胆石と高血圧の既往あり健診太郎三十二歳

ダ・ヴィンチ『短歌ください』(9月号)第53回テーマ「年齢」 
(穂村さんの選評)
「『大阪太郎』とか『年金太郎』とか、市役所の記入用紙の見本にある人名のプロフィールを見るのが好きです」という作者のコメントがありました。私も彼らを想像してみることがあります。若過ぎたり完全健康体だったりすると、健康診断の問診票の見本である「健診太郎」は務まらないんですね。

6月号以来の採用。
7月、8月は納得のいく歌が作れず、二首しか投稿できていなかった。
やっぱり五首は送らないと載るのは厳しいのかな。

ただ、自分で納得のいく歌は必ず(穂村さんには)届いているのは嬉しい。
自分でも嘘くさいと思う歌は百発百中で没になっている。

『短歌ください』は、単行本として続編が出るとしたら
第31回~60回までが収録されるだろうから、
出来るだけ多く載せておきたい。

今月号には、くどうよしおさん、山田水玉さん、山本まともさん、と、
知った名前の方が3人も載っていた。
みんな劣らず面白い歌で、そのことも嬉しかった。


【番外】 同じ「年齢」テーマで送って没になった歌。
もう熟女モノに出るのか去年まで女子高生の役だったのに
熟女好きの某隠れキノシタンを喜ばせるつもりで作ったけれど、叶わなかった。