ダ・ヴィンチ『短歌ください』(2014年7月号)第75回「眼鏡」
(穂村さんの選評)「ぼんやりして拭いてしまい、取り返しのつかないことをしてしまったことに鳥肌が立った」との作者コメントあり。日常の裂け目のような一瞬。物理的な次元ではただ「メガネ」を拭いただけなのに。
「友達」は、実際に呼んでいたあだ名にするか迷ったけど、
そこでリアリティを追求する必要はないと判断してやめた。
自作短歌にからめて自分語りをするのは野暮かもしれないけど書く。
その友達は同じマンションに住んでいた幼なじみで、小学校の頃はそれほど親しく遊んでいなかったけれど、
中学の剣道部で3年間、僕が主将、彼が副主将を努めて以来、親友といって差し支えない仲になった。
高校1年のとき、Nirvanaの“From the Muddy Banks of the Wishkah”という実質的にはカート・コバーンの追悼盤に
近いライブアルバムを「Track1冒頭のシャウトが凄いから聴いてみろ」と半ば無理やり彼に貸しつけた。
それ以来、彼はなぜかデスメタルをこよなく愛する青年になってしまった。
歌声なのかブルドッグの唸り声なのか聴き分けのつかない音楽を、彼は貪るように聴いていた。
それでも、僕が薦めるポップミュージックだけは好んで聴いてくれて、
くるりの『東京』を貸したときには、その感動をマンションの廊下で夜通し語られた。
秋も終わりかけの頃で、まさかそんなに長時間話すことになると思わず油断して部屋着のまま外に出て話をしたので、
次の日に風邪を引いてしまったのを覚えている。
そんな感じで、僕らはよくマンションの廊下でお互いに好きな音楽の話をしていた。
彼のことを思いだすとき必ず、一緒に行ったくるりのライブのことを思いだす。
京橋のIMPホールで観たTEAM ROCKツアーのライブ。
当時のくるりのレパートリーから考えられうる最高のセットリストを終え、
アンコールではナンバーガールの向井秀徳氏がサプライズで登場。
日本の音楽史上屈指のメガネツートップがステージに並び立ち、
西暦2000年のアンセム『ワンダーフォーゲル』を演奏してくれるという夢のような夜だった。
この日のライブはYoutubeで観ることができる。
そのときの再アンコールのときのコールが、「メ・ガ・ネ!メ・ガ・ネ!メ・ガ・ネ!」だったという話。
採用歌以外に投稿したのは次の短歌。
未来から来た科学者がめがねめがねめがねめがねとうろたえている
来月号のダ・ヴィンチの第2特集はフジファブリックらしい。
短歌を載せた上で買いたいなあ。
自分語りにコメントするのは野暮かもしれないけれど、いい話。
返信削除ノスタルジーに酔うのではなく語られる回想は胸に沁みます。
向井秀徳はZAZENBOYSではなく弾き語りのほうの「自問自答」を愛聴しています。
祖母と思って話しかけたら枯れ木(自由律虚無俳句)
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