2013年3月17日日曜日

今日活字になった歌

君という葡萄畑の夕暮れにたったひとりの農夫でいたい
日経歌壇(3月17日) 岡井 隆 選
(岡井さんの評)
現実の葡萄畑と農夫ではなくバルビゾン派の絵のイメージから発想した美しい相聞歌である。
この歌は、先日ご結婚された牛隆佑さんへの
結婚祝いの歌としてこっそり贈った一首。
牛さんが
ゴッホでもミレーでもない僕がいて蒔きたい種を探す夕暮れ
という僕の歌を気に入ってくれていたので、
それの続編っぽいものを贈りたいな、
ということで生まれた。

僕にしては珍しい甘めの歌。
こういう機会がないとつくらない気もするが、
今後も作風を広げる訓練は続けたい。

牛さんじゃこさん、あらためてご結婚おめでとうございます。
牛隆佑さんの2013年のブログ
消燈グレゴリー その三
じゃこさんのブログ
めくるめく

2013年3月14日木曜日

文学フリマで売るもの その1

「何らかの歌詠みたち」は文学フリマに参加します。
 詳しくは 「第十六回文学フリマin大阪」2013年4月14日(日)のご案内

あと一ヶ月なので、売るものをぼちぼち紹介していきます。

【ポストカード/Short Song × Story】

短歌に写真を合わせ、さらに
140字程度の散文を添えてみました。

おくる、かざる、よむ。

1枚で3度おいしいポストカードです。

お互いがお互いのイメージを限定しないよう、
相乗効果のあるコラボレーションとなるように
絶妙の距離感を意識して制作しています。

まだラフですがこんな感じ。




 
 短歌は、木下龍也さん、飯田和馬さん、飯田彩乃さんと僕 岡野大嗣のもの

 散文の書き手は、詠み手本人か木下龍也さん

ちなみに、僕の短歌(5首)に添える散文はすべて木下さんにお任せしました。
1枚ずつでも楽しめますし、
5枚まとめて読めばストーリーはさらに豊かに。

販売予定価格は1枚100円。
ぜひ、全種類コレクションしてください。

木下龍也自由律虚無俳句集 Vol.5


先日作者本人がこんなツイートをしていた。







みなさん、彼のポッケがパンパンになる前に
買いに来てください。



   骨折自慢が始まった

   時刻表トリックは勘弁してくれ

   満月の路上にけんけんぱの形跡

   ねじ五本余って不安

   キス待ちの沈黙だったんじゃないか

   「パ」だけ消えている消しているのか

   駄菓子大人買いできてさみしい

   家でチンするとものすごく熱い

   「今日は」で二回「休みます」で一回咳をしよう

   こんなに御札貼る奴のほうが怖い

   三つ編みだが老婆だ

   泡立てた髪アトムにしてひとり

   連打してフットライトのボタンだとわかる

   海苔の大半をフィルムに持って行かれた

   願いなんて聞いてないぞ流れ星は

   行ける所まで行こうやはり帰ろう

   犬で言うと俺はまだ二歳

   このコップ祖母が入れ歯入れてなかったか

   五歳児の宝物大きなスーパーボールをできるだけ遠くに投げる

   スーパーボールの件で親が来た

   季節を無視した服装だ

   いい人だと思われたくて言う雨が好きだ

   お湯になるまで水を見送る

   ピスタチオの殻かと思ったら爪爪爪爪爪



2013年3月13日水曜日

短歌meetsMusic 59

ああそれなら真っ直ぐ行ったその先を右に曲がれば青空ですよ (牛隆佑

meets(王舟/New Song)

短歌meetsMusic 58

穏やかな顔で眠りにつきましたアサヒスーパードライが死因 (六条くるる

meets(双葉双一/天使とドライブ)

短歌meetsMusic 57

雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる (木下龍也

meets(Alfred Beach Sandal/彼はマジシャンではない)

短歌meetsMusic 56

お花見で手を繋いだということは 必然的に海辺でキスか (檀可南子

meets(柴田聡子/芝の青さ)

短歌meetsMusic 55

少しだけ海外のようなこの街で少しだけきみの指先に触れる (ろくもじ

meets(平賀さち枝/恋は朝に)

短歌meetsMusic 54

こそこその話がやがて高くなり
ピストル鳴りて
人生終る                (石川啄木)

meets (Nirvana/ All Apologies <MTV Unplugged> )

短歌meetsMusic 53

たよりない君といるからたよりない僕もたよりになるようになる (鹿ケ谷街庵

meets (フィッシュマンズ/頼りない天使)

短歌meetsMusic 52

すべてから置いていかれた心地する回送電車見送る夜は (こはぎ

meets(The Postal Service/The District Sleeps Alone Tonight)

短歌meetsMusic 51

月面を歩くみたいに不器用な はじめまして と どうぞよろしく (とびやま

meets(LaB LIFe/ステレオ)

短歌meetsMusic 50

ケンカして飛び出した朝つり革を2つも使う人ばかりいる (高橋徹平)

meets (Idlewild/Live in A Hiding Place)

短歌meetsMusic 49

アンテナの立たない方へ逃げていく 追い風だけを友達として (ちょろ玉

meets(The All-American Rejects/The Wind Blows)

短歌meetsMusic 48

水銀の如き光に海見えてレインコートを着る部屋の中  (近藤芳美)

meets (James Blake/Lindisfarne)

短歌meetsMusic 47

悲鳴が聞こえた気がして掃除機を切るまたつける悲鳴があがる (蜂谷駄々

meets (world's end girlfriend/Birthday)

短歌meetsMusic 46

牛乳のパックの口を開けたもう死んでもいいというくらい完璧に (中澤系)

meets(麓健一/バリケード)

短歌meetsMusic 45

じゃあねって口が動いて手があがる。僕の指にも抜ける朝焼け(飯田和馬

meets(Bright Eyes/First Day of My Life)

短歌meetsMusic 44

新聞をとどける仕事ひとつ増え病院までのゆるやかな坂 (田中ましろ

meets(くるり/坂道)

短歌meetsMusic 43

世間から外れたような夕闇にひらくたんぽぽ四五輪がほど (石田比呂志)

meets (二階堂和美/宿はなし[くるり Cover])

短歌meetsMusic 42

うつむきてひとつの愛を告ぐるときそのレモンほどうすい気管支 (永井陽子)

meets (Joni Mitchell/A Case of You - live 1974)

短歌meetsMusic 41

なんとなくうまくいかない春だから河原で殴り合いをしようよ (魚住蓮奈)

meets(Ash/Kung Fu)

2013年3月11日月曜日

ファミコンのカセットほどに

日経歌壇に投稿しはじめたのは2011年の9月頃。
会社で日経をとっていたから。
当時は穂村さんが誰なのかも知らなかった。

比較的短期に結果が分かるので
調子をはかるバロメーターとしても使えるし、
新聞で活字になるのは結構うれしいので投稿を続けている。

日経歌壇ではいい歌によく出会うのに、
スクラップし忘れてそのまま思い出せないことが多いので、
ブログに書き残しておこう。

昨日刺さった歌はこれ。

ファミコンのカセットほどに軽くなり猫よこのまま死んでゆくのか (山上 秋恵)
日経歌壇 穂村 弘選(2013年3月10日付)

猫の死の質量のたとえとしての「ファミコンのカセット」が、
それ以外たとえようのないほどジャストな実感をもって伝わってきた。(30代以上限定?)
語感の軽さの効果もあるのかな。
穂村さんは「冒涜的なリアリティに惹かれた」と。
作者の山上さんは岡井隆選でもよく見かける日経歌壇の超常連で、
上句の流れからは予想もつかない下句を、想定外のリアリティで繋げてくる作風が印象的。

次の2首も良かった。

自分よりでかいチーズを見た日から猫に追い回されて生きてる (羹 昌浩)
同 穂村弘選

旧作に収録された新作の予告も既に旧作の夜 (木下 龍也)
同 穂村弘選

このブログのコメント欄への寄生にとどまらず、
先週はダ・ヴィンチでも日経でも木下さんと一緒になって、
いったいどこまで憑いてくるんだと怖くなった。


2013年3月10日日曜日

今日活字になった歌

地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで
日経歌壇(3月10日) 穂村 弘 選
今回は穂村さんの評は無し。
うたつかい編集長のさくらこさんがTwitterで感想付けてくれているのでそれを。
さくらこさんいつもありがとうございます。(さくらこさんのブログ さくらんぼの歌
(さくらこさん感想)
BGMは人がいなければ必要ない。人が消え街はただの通り道に。大阪のある二つの地下街を思う。一つはまだ熱を残した閉店後の地下街。もう一つはもう何年も冷え切ったシャッター街。
今日の日経歌壇は他にいい歌が目立った。
詳しくはこちらの記事を。



ところでこれは1月16日に投稿した歌。今頃載るとは思わなかった。
これまでの経験上、日経歌壇に載るまでの期間は
最短で13日、最長が今回の53日。
穂村さんの立て込み具合と関係があるのかないのか。

2013年3月8日金曜日

木下龍也自由律虚無俳句集 Vol.4

加速する更新頻度。

『木下龍也自由律虚無俳句集』は
4月14日の文学フリマで販売する予定です。


   その恰好じゃピクニックには連れて行けない

   なんだこいつらサンバイザーに操られているのか

   テント忘れて野宿決定

   箸がないことに海岸で気付く

   湯船では出港できないんだよ

   おまえがいも飴ばっかり買ってくるからだろ

   路上ライブCD売り始めたから帰る

   はやく出て行ってくれ拍手で手が痛い